2018年4月27日金曜日

【回転窓】奮闘する人たちに光を

地震や豪雨、土砂崩れなどに見舞われた時、建設会社は地域の守り手として被災地に駆け付け、応急復旧に当たる▼地道で時に危険が伴う活動を担う人たちは強い使命感を持って災害の最前線に立っている。建設業界のそうした役割にスポットが当たるケースは残念ながら少ない▼「災害が起きるたびに悔しい思いをしていた」。そう語る自民党参院議員の足立敏之氏は国土交通省時代、自然災害の発生現場に急行し自治体の活動を支援する「テックフォース(緊急災害対策派遣隊)」の創設に携わった▼災害に限らず現場で奮闘する人たちに光を当て、建設産業の役割を知ってもらう。ここ数年、建設産業に関わりがある官民の関係者はこの課題と正面から向き合い試行錯誤を重ねてきた。これをすれば正解という明確な答えがなく、情報を発信しても受け手がどう捉えるかも分からない。広報活動の難しさはこの辺りにあるのだろう▼本紙は先日、『建設業で本当にあった59話の心温まる物語』という冊子を発刊した。何げない日常の出来事から生まれる失敗談や感動話…。建設産業の魅力の一端を知ってもらえればと願っている。

【公団発足から60年、首都高の歩み紹介】6月に都内で技術講演会・展示会

首都高速道路会社は6月6日、東京都千代田区の有楽町朝日ホールで前身の首都高速道路公団発足から60年の節目を記念した技術講演会を開催する。

 定員は600人(事前登録制)。申し込み期限は5月18日。手続きの詳細については共催者の首都高速道路技術センターのホームページで確認できる。

 講演会では午前の部として、東京を中心に首都圏の慢性的な交通渋滞の緩和を目指し、1959年6月に誕生した同公団の創設期から現在までに高速道路事業で導入されてきた最新技術を紹介する。

 午後の部では道路橋を中心とした今後のメンテナンスの在り方などについて、首都高速会社の担当者のほか、国土交通省や大学など関係者らが講演する。会場内では技術展示会「首都高の技術60年~建設から管理まで&今後に向けて」(会期6月6~8日)も行う予定。参加費は講演会の午前の部と展示会が無料。講演会の午後の部は5000円。

【委員に星野リゾート社長ら】環境省、国立公園内の宿泊施設開発の在り方議論

環境省は26日、国立公園での宿泊施設の開発や経営の在り方を考える有識者検討会を立ち上げると発表した。

 約1年前から観光資源化を打ち出している国立公園でのホテルや旅館の開発促進に向け、自然保護との調和や経営手法の多角化といった観点から具体策を議論してもらう。検討会の意見を踏まえ、19年度予算概算要求での事業化や制度設計に反映させる。

 「国立公園の宿舎事業の在り方に関する検討会」の初会合は5月8日に東京都内で開く。6月に開く2回目の会合で意見をまとめてもらう。座長には涌井史郎東京都市大環境学部特別教授が就く。

 涌井座長を除く検討会委員は次の各氏(かっこ内は肩書)。

 ▽雀部優(三井不動産ホテル・リゾート本部ホテル・リゾート本部長補佐)▽沢柳知彦(立教大大学院ビジネスデザイン研究科特任教授)▽せきねきょうこ(ホテルジャーナリスト)▽下村彰男(東大大学院農学生命科学研究科教授)▽高田洋平(高田法律事務所弁護士)▽星野佳路(星野リゾート社長)▽吉田正人(筑波大大学院人間総合科学研究科教授)。

【6月に「パッテンライ!」上映会など】土木学会、虫プロ前社長・伊藤叡氏偲びイベント開催へ

土木学会(大石久和会長)は6月6日、今年1月に亡くなった伊藤叡前虫プロダクション社長を偲び、伊藤氏が制作を手がけたアニメ上映会やパネルディスカッションを開く。場所は東京・四谷の同学会本部。

 「土木とアニメの邂逅(かいこう)」をイベントタイトルに、上映するアニメ「パッテンライ!!南の島の水ものがたり」は、台湾で「烏山頭ダム」の建設を指揮した八田與一氏の功績を描いた作品。同学会の映画コンクールで最優秀賞を受賞している。

 上映会のほか、台湾や日本国内で講演活動を展開する孫の八田修一さんや劇中で声優を務めた一青妙さんら4人をゲストに迎えたトークショーも行う。参加は無料。定員は約120人。申し込みを同学会ホームページで受け付ける。

【国交省が建築工事入札公告】赤坂迎賓館前公園にカフェなど新設

国土交通省官房官庁営繕部は26日、「赤坂迎賓館前公園施設(仮称)新築(18)建築その他工事」の一般競争入札(WTO対象)を公告した。

 東京・赤坂の迎賓館を訪れる観光客が憩うカフェなどの機能を持つ施設を建設する。技術提案評価型S型とう施工体制確認型の総合評価方式、1次審査(申請書)とを採用する。

 申請書は5月21日まで、技術提案書は6月1日から7月7日まで電子入札システムか管理課契約第二係への持参で受け付ける。入札書を7月27日まで受け付け、同日に開札する。

 入札には建築工事の経営事項評価点数が1200点以上の単体企業が参加できる。所定の施工実績も求める。

 建設地は迎賓館の正門前にある若葉東公園(新宿区四谷1の12の11地先)の西側のエリア2534平方メートル。同施設の規模はRC一部S造地下1階地上1階建て延べ1169平方メートル。カフェや休憩スペース、トイレなどの機能を持たせる。迎賓館と公園の景観に配慮し、面積の大半を地下に配分している。工事では建築、電気・機械設備、造園、外構の整備などを行う。工期は20年3月19日まで。2020年東京五輪までの開業を目指している。基本・実施設計と積算は柳澤孝彦タック建築研究所が担当した。

 迎賓館は16年4月から通年で一般公開を開始。1日平均約4500人の観光客が訪れているが、周辺に飲食を含めた商業施設がないことから、休憩ができる施設の整備を求められていた。

【都と民間が方向性検討】神宮外苑地区街づくり、五輪後想定し検討会設置へ

東京都都市整備局は26日、「東京2020大会後の神宮外苑地区のまちづくり検討会」を新たに設置すると発表した。新宿、渋谷、港の3区にまたがる神宮外苑地区を対象に、2020年東京五輪後から民間が主体となって進める街づくりの方向性などを議論する。

 一定規模以上の敷地を緑地・広場として確保することを条件に都市開発を進める「公園まちづくり制度」の活用要件などを検討する見通しだ。

 神宮外苑地区では国立競技場を建て替える計画を受け、13年に歴史的景観の保全や大規模スポーツ施設の更新などを促進する地区計画が決定。15年に都と関係権利者が「神宮外苑地区まちづくりに係る基本覚書」、3月30日には覚書に基づく協議内容を踏まえた確認書を交わしている。

 確認書では、都が同制度の活用要件を検討することに加え、関係権利者が施設計画、事業計画、スケジュールなどを検討すると明記。関係権利者は宗教法人明治神宮、日本スポーツ振興センター(JSC)、高度技術社会推進協会、伊藤忠商事、日本オラクル、三井不動産。五輪後、早期の事業着手を目指すとしている。

2018年4月26日木曜日

【回転窓】ネットを駆使して興味を引く

働き方改革や生産性向上という言葉を新聞などで目にする機会が増え、それと同時に人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)といった用語も定着しつつある▼業務を効率化し、働き手の負担を軽くする技術の進化はまさに日進月歩。次々と新しいものが生み出され、あっという間に世の中へ広がっていく。世の中が便利になるのは歓迎するべきなのだろうが、急速な変化に戸惑う気持ちが心の片隅にある人も少なくないのでは▼子どもの頃からインターネットに馴染み、当たり前のようにスマートフォンなどを使いこなす。デジタルネーティブと呼ばれる世代にアプローチし興味を持ってもらうことも、人材不足にあえぐ産業界には大きな課題だ▼少し前に近畿地方整備局のある事務所が、中学生を対象にインターネットを利用した現場見学会を開いたというニュースを見た。道路工事をネット中継で見学。現場職員と生徒らの質疑応答時間も設けられ、企画は好評だったという▼現地に足を運んで実際に見て感じてもらうのも大切なのだが、参加の機会や人数は限られる。ネット見学会の開催は、良案ではと思う。

【2021年3月の完全民営化目指す】北海道7空港の一括運営事業者公募開始

国土交通省と北海道、旭川、帯広の両市は25日、道内にある7空港の一括運営委託事業者を選ぶ公募手続きを開始した。

 8月16日に応募書類の提出を受け付ける。審査を経て19年7月に優先交渉権者を選定する。20年1月15日に旅客ビルに特化した一括民営化を開始し、21年3月ごろから一括完全民営化に移行する。

 公共施設等運営権(コンセッション)方式を採用する。運営委託する空港は▽千歳▽稚内▽釧路▽函館▽旭川▽帯広▽女満別-の7空港。新千歳、稚内、釧路、函館の4空港は国、旭川空港は旭川市、帯広空港は帯広市、女満別空港は道が管理している。

 単体または複数の企業で構成するコンソーシアムが応募できる。単体とコンソーシアムの代表者は、2008年以降に▽店舗面積1万メートル以上の商業施設または延べ床面積2万平方メートル以上の公共施設の運営▽年間利用者数1500万人以上の旅客施設または延べ床面積2万平方メートル以上の貨物取扱施設の運営-など、いずれかの実績を求める。

 運営権者は着陸料やその他の収入を設定・収受し、それらを原資に事業実施費用を負担する。国に支払う運営権対価は一時金がゼロを上回る金額の提案、分割金が年間24億円(30年間)を設定。地方管理3空港は公的負担も受ける代わりに、公的最大負担額の削減額について空港ごとに提案を受ける。

【収容1・5万人以上を想定】福島県いわき市、スタジアム中心のまちづくりでFS実施

福島県いわき市は25日、「スタジアムを中心としたまちづくり事業可能性調査業務」の委託先を選定する公募型プロポーザルの実施要領を公示した。

 1万5000人以上を収容するスタジアムの整備に向け、候補地や資金調達方法などを検討する。5月15日まで参加表明を受け付ける。提案書の提出期限は同21日。プレゼンテーションとヒアリングを踏まえ、同30日に審査結果を通知する。

 市はスポーツが地域の新たな経済エンジンになるとの視点で、スタジアムを中心としたまちづくりを検討する。今回の業務は具体的な議論を進めるため、スタジアムの機能や規模をはじめ、整備候補地、建設資金の調達や管理運営方法などについて調査・分析を行う。

 審査委員会が評価基準に基づき総合的に評価し、最優秀者(契約候補者)と次点者を選ぶ。提案者が1者の場合も最低点(提案内容評価点の5割)以上を獲得すれば契約候補者として選定する。プレゼンテーションとヒアリングは5月24日に実施する。

 スタジアムの設備や機能などは、日本サッカー協会の「スタジアム標準」に準拠し、規模は「クラス1以上」の大会を誘致できる1万5000人以上を想定している。

 同業務では、敷地面積の確保や交通アクセス、周辺環境、用地取得費などから整備候補地を3~5カ所選定するとともに、コンセプトや来場者需要予測に基づく適正な規模、スタジアムに併設する機能、地域住民との連携機能などを検討。建設コストの試算や資金調達方法、建設・運営主体の在り方を検討し、経済波及効果を分析する。専門家会議の開催支援も行う。履行期間は19年3月31日。提案上限額は2052万円(税込み)。

【5エリアでジブリ作品の世界観表現】愛知県、ジブリパークの基本デザイン公表

「ジブリパーク」の施設配置イメージ(愛知県発表資料より)
愛知県の大村秀章知事は25日、長久手市の愛・地球博記念公園内に計画している「ジブリパーク」の基本デザインを発表した。宮崎駿監督のアニメ映画「となりのトトロ」など、スタジオジブリ作品の世界を表現した施設を5エリアに分け整備する。今後、同社とさらに協議を進め、基本構想を作成する。19年度に設計、20年度から整備を行い、22年度開業を目指す。

 3月、県がジブリパークを整備し、同社が構想全体の企画監修、デザイン作成を行うことで確認書を交わしていた。基本デザインによると、公園内の未利用地などに「青春の丘」「ジブリの大倉庫」「もののけの里」「魔女の谷」「どんどこ森」の5エリアを整備する。
「青春の丘エリア」のイメージ(ⓒスタジオジブリ)
「青春の丘エリア」になるのは、現在のエレベーター棟周辺約7500平方メートル。同棟を19世紀末の空想科学的要素を取り入れた建物に改修。映画「耳をすませば」に登場する「地球屋」を再現した施設も整備する。「ジブリの大倉庫エリア」は、今年9月末で営業を終了する予定の温水プールの建物を利用する。約60メートル×70メートルの建物内にシアターや子供の遊び場、巡回展などの展示物を収納する倉庫を設ける。
「もののけの里エリア」のイメージ(ⓒスタジオジブリ)
「もののけの里エリア」の対象地は、果樹園や田として使われている部分の空き地約5400平方メートル。映画「もののけ姫」をイメージした「タタラ場」などの建物を整備する。広場には「もののけ姫」に登場する「タタリ神」や「乙事主」などのオブジェを設置する。
「魔女の谷エリア」のイメージ(ⓒスタジオジブリ)
「魔女の谷エリア」の対象区域は、芝生広場東側の未利用地約2万7000平方メートル。映画「ハウルの動く城」「魔女の宅急便」に登場する原寸大建物や遊戯施設を整備、ミニ遊園地的なエリアとする。「どんどこ森エリア」は、既存の「サツキとメイの家」の周辺約2万平方メートルが対象。受付棟を改修するほか、裏山の遊歩道をトトロの森をイメージさせるよう再整備する。

 会見で大村知事は「日本文化の発信基地として、国内外の幅広い世代の人に来てもらえるような公園にしたい」と話した。基本構想策定に着手するため、補正予算に策定費を盛り込む考えも表明した。

【サッカースタジアム中心に開発実施へ】長崎造船所幸町工場跡活用、交渉権者にジャパネットHDら

三菱重工業は長崎造船所幸町工場跡地(長崎市幸町、約7ヘクタール)の利活用に向けた事業者公募で、サッカースタジアムをメインとする提案を行っていた通信販売大手のジャパネットホールディングス(HD、長崎県佐世保市)らのグループを優先交渉権者に選定した。

 24日に基本協定を締結。今後、具体的な条件を詰め、今夏ごろに土地売買契約を結ぶ予定だ。スタジアムの設計は竹中工務店が担当する。

 跡地は工場再編に伴う生産拠点の移転により発生。本年度中に建物は撤去し土壌汚染対策を行った上で更地にする。新幹線開業を控えるJR長崎駅から近く、市内でも貴重な大規模敷地で将来のまちづくりへの貢献が期待されているため、「住む・働く・楽しむ」をコンセプトに利活用事業者を公募。複数の企業やグループが提案を行っていた。

 優先交渉権者グループはジャパネットHD、総合不動産サービスを展開する外資系のジョーンズラングラサール、JLLモールマネジメントで構成。「『長崎を生きる楽しさ』を!」をコンセプトに提案を行い、「長崎の街の魅力をさらに高める」(三菱重工)として選定された。

 同グループは詳細な提案内容を明らかにしていないが、ジャパネットHDの子会社でサッカーJリーグ1部(J1)に今季から参戦しているV・ファーレン長崎のホームスタジアムをメインとした開発を提案した。基本協定締結を受け、長崎市の田上富久市長は提案について「市の活性化に大きく貢献する、夢のある内容」とのコメントを発表し、プロジェクトへの支援を表明した。

2018年4月25日水曜日

【提携紙ピックアップ】建設経済新聞(韓国)/海外建設受注が失速

海外建設受注事業が加速力を失っている。海外建設協会によると、第1四半期(1~3月)は大型プロジェクト受注が相次ぎ、昨年より約10日早く100億ドルを超えたが、第2四半期(4~6月)に停滞した。

 協会関係者は、加速力を失った背景として「さまざまな理由のうちプラント部門の受注が急減して、こうした結果がもたらされた」とする。

 プラント商品のうち発電所、精油工場、化学工場の輸出実績が昨年と比較して低調な状態だ。このうち発電所の受注実績は、昨年4月11日までに60億ドル以上を記録したが、今年はまだ1億ドルに至っていない。精油工場と化学工場も、同様の傾向。さらに、土木部門では道路と上水道、建築部門では業務施設と学校施設の受注が振るわなかった。

 海外受注を拡大するために、投資開発型事業を発掘する必要性を強調する声が大きくなっている。

CNEWS、4月12日)

【提携紙ピックアップ】セイ・ズン(越)/埼玉大学との共同研究拠点開設

 国立土木工学大学(NUCE)と埼玉大学は、19日にハノイ市内のNUCEで共同研究の拠点となる事務所の開所式を開いた。

 両者は、科学技術振興機構(JST)と国際協力機構(JICA)が共同で実施している地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)の枠組みで、建設廃棄物の適正管理と建廃リサイクル資材を活用した環境浄化・インフラ整備技術の開発を行う。事業期間は18年2月から23年2月までの5年間。

 建設廃棄物の適正な処理とリサイクルは、ベトナムで緊急に解決が必要な課題とされる。今回のプロジェクトは、学術的な意義に加え、中央・地方の政府機関が日本の知見を学び、技術指針を策定することなどにも役立つと期待される。

セイ・ズン、4月21日)

【〝神ペダル〟で自転車利用PR】国交省、アンバサダーに稲村亜美さん任命

 国土交通省は、タレントの稲村亜美さんを「自転車アンバサダー」に任命した。同省は自転車の利用拡大に向け、全国の一般道で自転車専用道の整備を推進する方針を打ち出している。

 男性野球選手に見劣りしない豪快な投打の姿で健康かつ活発なイメージの稲村さんを起用し、健康増進や交通混雑の緩和に有効な自転車の魅力を若い世代を中心にPRする。

 任命書を手渡した石井啓一国交相は「自転車の魅力に加え交通マナーも積極的に発信してもらいたい」と今後の活躍に期待。稲村さんにはサイトやポスター、イベント出演などを通じ自転車の楽しさや自転車のある生活スタイル、マナーの重要性などを発信してもらう。

 稲村さんはテレビCMで披露したバッティング姿が「神スイング」として注目を集め、プロ野球の始球式でも男性選手顔負けの速球を披露している。石井国交相から任命を受け「今後は『神ペダル』と呼ばれたい」と笑顔で話した。

 国交省は、石井国交相をトップとする政府の自転車活用推進本部がより一体感を持って活動するためのロゴマークと、自転車の利用を多様な民間団体とも連携して進めていくための共通のスローガンを用いたロゴマークも決定した。石井国交相と稲村さんが披露した。

2018年4月24日火曜日

【回転窓】目指すはナンバーワン

1933(昭和8)年に全国初の公営地下鉄として開業した大阪市営地下鉄が今月民営化され、大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)として再スタートした▼青を基調にメトロの「M」の文字を白色で描いた新しいロゴマーク。都市計画学者で「大阪の父」などと呼ばれた關一(せき・はじめ)第7代大阪市長が計画を練り上げ、実現させた公営地下鉄が民営化によってどう変わるのか▼市交通局から事業を引き継いだ新会社。JRや私鉄各社が鉄道だけでなく商業施設やホテル、不動産など経営の多角化に取り組むようになった。集客という観点からいえば、一般的な小売業やサービス業などに比べ鉄道は有利な点が多いと見る▼まさに「駅から徒歩0分」という超好立地な条件をどう生かし、大勢の人々に質の高いサービスが提供できるのか。鉄道事業者には既成概念を打ち破る斬新なアイデアが求められている▼新生大阪メトロはこれからどのような事業展開を見せるのだろう。安全安心を守りながら民間から登用された社長を先頭に新たな一手を打ち、「変わったのはロゴだけではない」と思えるような取り組みを期待している。

【宮ケ瀬ダムで6月17日まで】ダム協フォトコン、入賞作の展示会始まる

 日本ダム協会(宮本洋一会長)の第15回写真コンテスト「D-Shot contest」で入選した作品18点を紹介する展示会が22日、神奈川県愛川町の宮ケ瀬ダム脇にある「水とエネルギー館」で始まった。

 同日、オープニングイベントが開かれ、審査委員長を務めた土木写真家の西山芳一氏から受賞者に賞状が授与された。

 応募総数は356点。入選18点のうち「ダム本体」「ダム湖」「工事中のダム」「ダムに親しむ」「テーマ・音」の各部門から優秀賞が選ばれた。

 西山氏は「写真のレベルは格段に高くなっている。ダムを専門で撮り続けている人はかなり上達し、最近では私もかなわないぐらいだ」と講評した。

 オープニングイベントでは、ダム協の川崎正彦専務理事が「今回展示している作品はどれもダムの魅力が詰まっている。ここ宮ケ瀬ダムも工事中から多くの人が訪れ、現場を見せてきた。今後もさまざまな形でダムの魅力を伝えていきたい」とあいさつ。

 来賓として出席した足立敏之参院議員は「宮ケ瀬ダムには建設中の第8代の工事所長という縁もある。写真コンテストの展示会など、こうしたイベントを機に多くの人たちが集まる場所にしてもらいたい」と祝辞を述べた。

 表彰式に続いて、国土交通省関東地方整備局相模川水系広域ダム管理事務所(宮ケ瀬ダム)の竹本隆之所長が「水とエネルギー館のこれから」、西山氏が「私と宮ケ瀬」と題する記念講演を行った。展示会の会期は6月17日まで。会場は水とエネルギー館2階の展示スペース。

【開業予定は22年末】東京駅前超高層複合ビルにブルガリホテル出店

 三井不動産は東京駅八重洲口前で開発予定の超高層複合ビルに、イタリアの高級宝飾ブランド・ブルガリが展開するラグジュアリーホテル「ブルガリホテル東京」を国内初出店する。ホテルはビルの39階から最上階の45階まで配置予定という。開業予定は22年末。

 ホテル部分の延べ床面積は約1・9万平方メートル。客室はツイン・ダブルルームを中心に98室備える。共用部としてバーやレストラン、スパ、プール、ボールルーム、チャペルなど多様な機能を導入する。ホテル部分の外装デザインは米国の建築スタジオであるピッカード・チルトン、インテリアデザインはイタリアの建築設計事務所アントニオ・チッテリオ・パトリシア・ヴィールが手掛ける。

 超高層複合ビルは「八重洲二丁目北地区市街地再開発組合」が再開発事業によって整備する。三井不は事業協力者・参加組合員として事業に参画している。対象区域は東京都中央区八重洲2の1と2の一部、3(区域面積1・5ヘクタール)。区域を2街区(A-1、A-2)に分け、A-1街区には地下4階地上45階建て、A-2街区には地下2階地上7階建てのビルをそれぞれ建設する。総延べ床面積は29・3万平方メートル規模。

 ホテルはA-1街区のビルに設ける。このほか、事務所と店舗、区域内にあった区立城東小学校の新校舎が入る。地下階には国際空港や地方都市を結ぶ高速バスが発着するバスターミナルと駐車場などを設ける。A-2街区のビルには事務所や店舗、駐車場・駐輪場などを入れる。いずれもビル全体の設計を日本設計、施工は竹中工務店が担当。11月の着工と22年8月の竣工を目指す。

【記者手帖】インフラを支える夜間作業

鉄道会社の既設構造物を改良する現場を取材した。工事が行われたのは営業運転が終了した深夜から未明にかけて。ホームに利用者が誰一人いない静かな駅で、限られた時間を1秒も無駄にしまいと、多くの工事関係者が黙々と作業に当たる姿を目にした◆夜間現場を取材したのは初めてだったが、都市のインフラを支えるという鉄道、そして建設産業が背負う使命の一端を、垣間見たような気がした◆鉄道の大規模な保線作業やホーム改修工事も同様に、営業運転に支障が出ないよう夜を通じて実施されるケースが多い。鉄道など止まってしまうと日常生活や経済活動に大きな影響が出てしまう公共インフラの場合、間違いが許されず現場で作業に従事する関係者にのし掛かるプレッシャーは大きいはずだ◆通勤や取材などの移動でほぼ毎日、鉄道を利用する。当たり前のように運転している鉄道だが、その陰には多くの人の苦労と努力がある。深夜の工事現場を取材して、日々の安全や便利な暮らしのために人知れず頑張る人たちが数多くいることを、あらためて実感できた。(D)

【応募総数554作品、入賞は各13点】建コン協フォト大賞、受賞作品決まる

フォト大賞最優秀賞「大自然とともに」
(撮影:竹端正伸さん)
建設コンサルタンツ協会(建コン協、村田和夫会長)は18日、第9回「建コンフォト大賞」と第5回「建コンフォト大賞Jr」の受賞者を発表した。最優秀賞に竹端正伸さん(岡山県)が撮影した「大自然とともに」、中・高校生を対象にした大賞Jrの最優秀賞には大阪府立富田林高校の芝谷開さん(大阪府)の「夕暮れ海峡」を選定した。

 「大自然とともに」は鳥取県大山町の三の沢砂防堰堤と秋の紅葉、背景に広がる雄大な大山を切り取った印象的な作品。「夕暮れ海峡」は、太陽が沈む瞬間と明石海峡大橋(神戸市)を被写体に幻想的な風景を写した。
フォト大賞Jr最優秀賞「夕暮れの海峡」
(撮影:芝谷開さん)
両賞は建設コンサルタントの仕事への興味・関心を高めてもらおうと毎年実施。大賞に390点、大賞Jrには164点の応募があった。宇於崎勝也日大教授が委員長を務める審査委員会が大賞と大賞Jrで各13点の入賞作品を選んだ。

2018年4月23日月曜日

【回転窓】アウトドアの魅力を高める建築

新緑が目にまぶしい季節になった。人気が高いキャンプ場は早々に予約が埋まってしまい、来場者でにぎわっているそうだ▼テントとタープを自分で設置する王道のキャンプ。家族連れには寒さや風雨の心配をしなくて済むバンガローやコテージが人気だとか。最小限の荷物で済ませたいなら車中泊を選び、行動範囲を思い切り広げる方もいよう。スタイルはそれぞれ。お気に入りの道具に囲まれて思い思いの時間が過ごせるアウトドアの人気は高まるばかりだ▼総合アウトドアメーカーが四国に直営キャンプ場を開設した。テントサイトに加えて、建築家・隈研吾氏がデザインした「住箱(じゅうばこ)」という名の木造モバイルハウスも数棟配置される▼住箱は木のパネルを閉じると箱のように見え、ルールの範囲で使い方は自由。住まいと自然の関係を意識しており、生活を包み込むような優しい雰囲気が感じられるという。価値観の多様化が言われる時代。今までのキャンプ場とは違った過ごし方が見つかるかもしれない▼週末からいよいよ春の大型連休に入る。アウトドアライフを楽しみながら建築の魅力も感じてほしい。

【ご冥福をお祈りします】故小野金彌氏の社葬・お別れの会に700人参列

 全国中小建設業協会(全中建)会長をはじめ多くの建設関係団体の要職を務め、3月11日に94歳で死去した小野建設(静岡県三島市)会長の小野金彌(おの・きんや)氏の社葬・お別れの会が20日、三島市の三島市民文化会館で開かれた。

 建設・林業関係者、国会議員ら親交のあった約700人が参列。遺影に献花し別れを惜しんだ。

 小野氏は「社会に光を 人生に夢を」を社憲として社業の発展に努めながら、中小建設業の振興、発展に貢献し、多くの功績を挙げた。

 開式の辞を述べた葬儀副委員長の豊田剛全中建会長は、中小建設業の組織の拡大と結束を促した小野氏に謝意を示した。葬儀委員長の木内藤男静岡県建設業協会会長は「卓越したリーダーとして活躍され、絶大な信頼を寄せられていた」と弔辞を述べた。来賓代表の豊岡武士三島市長は「市民を代表して哀悼の意をささげる」と述べた。

 喪主で長男の徹氏(小野建設社長)は、謝辞の中で「先代社長の遺訓を胸にいっそう社業の発展に励むとともに、社会のために尽くす」と決意を示した。

【凜】国土交通省総合政策局国際政策課・石垣和子さん

 ◇長い海外勤務の経験生かす◇

 インフラ輸出を推進するキーパーソン。国土交通省幹部が相手国政府の要人に直接売り込む「トップセールス」を企画する。日本企業がほとんど進出していないアフリカや中央アジアの国で相次ぎ実現。日本の建設会社が受注した成果も出始めており、トップセールスに同行するゼネコン首脳からも信頼は厚い。

 入省から節目の丸20年を迎えた。キャリアの半分弱にわたる約8年間の海外勤務は、同世代の公務員の中でも「異例」と自らも認める。米ハーバード大学に留学し、フランスのパリに本部がある経済協力開発機構(OECD)やスイスのジュネーブにある国連防災戦略事務局に出向した経験も持つ。

 特に衝撃を受けたのが国連への出向時代。当初は自分の考えを積極的に提案しつつ、したたかさも兼ね備えた外国人の仕事の仕方にとまどった。

 だが、長年の海外での業務と生活で身に付いた前向きな姿勢で徐々に適応。15年3月に仙台市で開かれた第3回国連防災世界会議を円滑に運営できたことで「大きな自信と強さ、柔軟さを身に付けることができた」と振り返る。

 公務員として折り返し地点。まな娘は手が掛からない年齢になり、私生活も含めたこれからを「自分の時間が増え、次のステージに入るのが楽しみ」と話す。後輩たちに伝えたいのは「仕事をするなら前向きに楽しく」。

 (国際建設産業企画官、いしがき・かずこ)

【サークル】前田建設 書道部


 ◇生活に密着した文字を自分らしく書く◇

 前田操治社長の祖父である2代目社長の前田又兵衞氏は、書への造詣が深く、社内各部署に今も直筆の社是が掲げられている。

 折にふれて社員は又兵衞氏の思いを受け止めてきた。その意思を引き継ごうと1991年に書道同好会が発足。現在は会社公認の「前田建設書道部」として経営管理本部、建築事業部に所属する役職員4人(3月時点)で活動を続けている。

 読書同様に日々の仕事や生活とは切り離せない文字を自分らしく書き、自らを向上させていきたいという気持ちを持つことが活動を支える原動力。月に3回、外部から講師を招いて稽古(けいこ)に励んでいる。11月6日の創立記念日に合わせて発表できるよう、部員たちは毎年新たな作品に挑戦している。

 代表を務める管理部総務・秘書グループの竹村知子さんは今後の活動方針として「論語から始まり、いろいろな分野の書籍の字句も併せて学ぶうちに、個性ある字の表現を体得したい」と語る。

 目下、共に書の世界を楽しむ新入部員を募集中。積極的に仲間を募って部員を増やし、「より活発な部にしていきたい」と竹村さんは意欲を見せる。

【駆け出しのころ】安藤ハザマ常務執行役員首都圏建築支店長・飯村俊章氏

 ◇信頼し任せてもらうために◇

 小学生の時に読んだ子ども向けの本に、図画工作が好きな人は建築士に向いていると書かれていました。自分もそういったことが好きでしたので、いつしか建築を意識するようになり、小学校の卒業アルバムには建築の設計士になりたいと書きました。

 建築の道を進んできたという意味では、このころの思いを実現しているといえるかもしれません。そして子どもの頃から好きなサッカーは今も続けています。

 入社して最初に配属されたのは大学の増改築工事で、当時の会社で一番に大規模な現場でした。着任当日からまず覚えたのは雑事です。所長をはじめ15人ほどの上司や先輩がおられ、朝にはコーヒーや日本茶などそれぞれに好みの飲み物を出すのが日課でした。新人の仕事というのはこんなものから始まるもので、やることがないよりはましと考えていました。

 現場の仕事を覚えていくのに、マンツーマンリポートのやりとりが大変役立ちました。現場で覚えたことや分からないことなどを書き、定期的に先輩からチェックを受けるというものです。常にメモし、何かあればスケッチするという習慣もこれで身に付きました。

 新人時代で覚えているのは、私には厳しさが足りないと先輩から指摘されたことです。現場ではこちらがどれだけ真剣かを、厳しい口調で言わなければ伝わらないこともあるという教えでした。「仲良くなるのとなれ合うのとは違う」と言われたことも強く印象に残っています。

 現場でロングスパンエレベーターの仮設図を任されて描いたのが、技術者としてのやりがいを感じられた最初だったと思います。今ではCADですぐに描けますが、何日かかけてようやく描き上げた時はうれしかったものです。

 他大学のグラウンドに建てるクラブハウスの工事に携わった後、鉄筋コンクリート(RC)造で全面タイル貼りの建築工事を担当します。大変に難しい工事でした。これをやり遂げた時、自分で胸を張れるほどに大きな達成感が得られたのを思い出します。

 技術者は基本を知っていないと良しあしの判断ができません。若い人たちには基本を覚え、早く自分で責任を持ってやれるようになってほしいと期待します。技術者に限らず、お客さまはそうした人を信頼し任せてくれます。

 資格取得も重要で、自分の幅を広げられます。工事部長の時には、資格試験を受ける若手社員にポイントを短期集中で教えていました。しばらくたち、今度はそれを覚えていた社員から、自分の現場にいる部下にも教えてほしいと頼まれたことがありました。この社員は見事合格し、少しは役に立てたかと思っています。

 (いいむら・としあき)1981年東京電機大学工学部建築学科卒、安藤建設(現安藤ハザマ)入社。第二建築事業部工事部門工事部長、首都圏建築事業部副事業部長、安藤ハザマ執行役員首都圏建築支店副支店長兼営業統括部長などを経て、18年4月から現職。茨城県出身、61歳。
入社後初めて配属された建築工事現場で

【建設業の心温まる物語】光陽(大阪府)・原田浩一さん

 ◇苦しいときは出口の一歩手前◇

 入社して2年目の話です。会社の上司から、鉄骨造の14階のマンション新築工事に行くように言われました。当時、足場工事を行ったことはありましたが、鉄骨工事はほぼ初めてで、何をするにしても、やり方や進め方が違うので、分からないことだらけでした。

 現場の職人さんに「おまえ、今日からハイステージの責任者な!」と言われ、やったことのない私は、ただ言われたことをすることしかできませんでした。

 1日目、2日目に2節目の鉄骨から上のハイステージの作業を行った後、3日目から地上でハイステージの段取りにまわるように言われました。地上でネットやトピックの段取りや、トラックの荷さばきもするようにとの指示などを行っていました。ところが、地上から荷揚げした鉄骨を、上部に仮置きする場所が悪かったため、どんどんまわりに迷惑をかけ、工程が遅れてしまいました。

 そのとき、職長のAさんが「俺に任せろ。よく見とけよ」と言って、担当を変わってくれました。Aさんはテキパキと材料をさばき、なんと1日で元の工程に戻すことができました。私は、地上で行う作業をなめていたことにようやく気づきました。

 その日の晩にAさんに呼ばれ、「現場の作業もデスクワークも世の中のすべての仕事は『段取り8分、あとが2分』『苦しいときは出口の一歩手前』だ」と教わりました。

 夏の暑い中での作業で本当に苦しい現場でしたが、鉄骨の最後の梁が収まった瞬間、意味もなく泣いてしまいました。その晩、職長さんと飲んだビールの味がほろ苦くも、すごくおいしかったことは忘れられません。

【建設業の心温まる物語】エコワーク(静岡県)・小林剛さん

 ◇まだ日本も捨てたもんじゃない◇

 2009年8月に駿河湾を震源とする「駿河湾地震」が発生しました。その影響で、東名高速道路は、サービスエリア近くの盛土のり面が崩落し、通行止めになりました。
 当社は地震直後に現場に急行しました。そして昼夜を問わず応急復旧工事を行いました。当初しばらくの期間、通行止めとなる見込みでしたが、かなり通行止め期間を短縮することができ、数日後、通行できるようになりました。

 その後、全国各地から感謝の手紙が寄せられました。「早期の復旧ありがとうございます」「高速道路が早く開通して助かりました」「こんなに早く開通するなんて驚きです」という手紙に混じって、「まだ日本も捨てたもんじゃない」と書かれた手紙がありました。私はその一言がとても心に響きました。

 復旧工事の様子はテレビ中継されていました。そのため、全国で見ている人が多かったのです。私たちは、そんなことに気づかず、ただただ早く復旧させたい一心で、黙々と作業をしていました。だからこそ多くの手紙は驚きだったと同時にとてもうれしく思いました。

 人をこんな気持ちにさせる仕事を誇りに思い、やりがい、働きがいを感じます。だからこそ、工事を進める中でつらいことがあっても、これまで仕事を続けることができているのだと思います。

【建設業の心温まる物語】本陣(愛知県)・眞野健治さん


 ◇花のじゅうたんが自慢の作品◇

 弊社の本業は造園業なのですが、近年造園工事の仕事が少なくなり、土木工事が主になってきました。私は、木や花が好きでこの仕事についたので、少し寂しい気持ちになっていました。

 そんな中、愛知県で開催される全国都市緑化あいちフェアでの造園工事を受注することができました。そして、私が担当することになったのです。造園業らしい仕事に久々に携わることができたのです。

 その現場は緑化フェアの設営および造成を施工するもので、およそ28万鉢の花を植える工事です。おそらくもう二度とこのような規模の工事に携わることはないと思えるほどの、やりがいのある現場です。

 緑化フェアは9月から開催されるため、設営や花の植え付けを真夏の時期に行わなければなりません。お客さまにきれいな花を見ていただくために、失敗は許されません。私は、毎日遅くまで施工方法を検討しました。そして、花の搬入時間を涼しい早朝にしたり、日中から夕方にかけて行う花へのかん水作業員を常時配置したり、人手不足の時は自ら花を植え付けたりかん水を行ったりしていました。

 その努力のかいあって、工事は無事終わり、緑化フェアは大好評でした。日に日に来場者数が増え、ついに目標数に達しました。緑化フェア会場の一面に咲き誇る花のじゅうたんが今でも自慢の作品です。

 また緑化フェアに、私の家族を連れて来ることができ、家族の喜ぶ顔を見たことも最高の思い出です。

2018年4月20日金曜日

【回転窓】鎌倉の大仏が人気を集める理由

神奈川県鎌倉市にある高徳院の大仏はミャンマーの人々に大人気で、来日すると必ず訪れるそうだ。同国からの留学生を指導する大学の先生が教えてくれた▼人気の始まりは「鎌倉の大仏を拝むと再び日本を訪問できる」といううわさ。話の真偽を留学生に尋ねると「鎌倉の大仏は大津波に耐えた強い仏様だから好き」と別の理由も教えてくれた▼鎌倉は1495年に起こった「明応の地震」で高さが10メートルを超える大津波に襲われた。大仏殿は波に押し流されたものの、大仏は津波に耐えそのままの場所に座り続けたという説がある。今、同規模の地震が起こったらどうなるのか▼鎌倉市がホームページで公開している津波シミュレーション動画が話題を集めている。地震発生から8分で高さ14・5メートルの津波が襲来し、建物が次々とのみ込まれていく。衝撃的な映像をHPで公開するのは賛否があると思ったが、避難するビルや経路の確認に役立つと冷静に受け止めた市民が多かったそうだ▼減災の取り組みはインフラ整備に限らない。自らの命を自らが守る「自助」はもちろん、公助や共助を広げるにはソフト対策が大切であろう。

【働き方改革へ労使協働の取り組み不可欠】日建協17年時短アンケート、所定外労働は8時間減少

日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、久保田俊平議長)は19日、「2017時短アンケート」の結果をまとめた冊子を発行した。

 加盟組合員の調査に基づく労働環境の実態をまとめており、所定外労働時間の削減に休日の取得が貢献していたり、所定外労働時間が減る中でも魅力を感じる現場勤務者(外勤者)の割合が改善していなかったりする現状を報告している。発注機関や経営者との意見交換などに活用する。

 主な結果を見ると、外勤者のうち技術職は1カ月の平均所定外労働時間が建築系は64・4時間、土木系は64・8時間で、ともに前年から約8時間減少した。理由には取得できた休日が増え、休日の所定外労働時間が減少したことを挙げた。「どうすれば土休が取得できるか」という質問に対しては、内勤者、外勤者とも回答は▽人員配置▽法的・社会的な土曜日の工事規制▽発注者の理解-の順に多い。1カ月に行っている所定外労働の時間にかかわらず、建設産業全体の労働時間を短縮するには「発注者による適正工期の設定」という回答が最多だった。

建設産業に「魅力を感じる」割合は、全体と内勤者がそれぞれ61・6%(60・0%)、65・7%(62・4%)に上昇したが、外勤者は前年と同じ58・3%だった。外勤者が「魅力を感じない」理由のトップは前年と同じ「労働時間が長い」で、2番目はサービス残業が当たり前といった「前近代的体質」、3番目は「請負体質」だった。

 外勤者は労働時間が減っていたことが分かったものの、魅力を感じる人の割合が増えていない。理由の分析はできていないが、回答者からは「申告できる残業時間が減り、サービス残業が増えるという減少が起きている」(20歳代)、「(出退勤管理の)ログの付かないパソコンを現場に置いていたり、パソコンを開かずに休日出勤している人も多い」(40歳代)といった意見が多数寄せられた。日建協は「不満に寄り添っていくことが重要」と指摘し、組合員の主体的な取り組みと共に、労使協働の対応を促すことの必要性を強調している。

 「自分の子供を建設産業に就職させたいか」という質問の回答は、「ぜひ就職させたい・できれば就職させたい」の合計が9・7%(9・5%)にわずかながら改善した。長時間労働を是正する取り組みが進展する中で懸念することには、「業務の粗雑化」を挙げる人が多い。土曜閉所の回数が多い職場の組合員ほど「残業手当、賃金の減少」を懸念する傾向にあった。日建協は「強引な時短」が組合員の嫌気、離職につながると見ており、働き手が納得した取り組みを引き続き促す構えだ。

【販売開始から半世紀、契機は前回の東京五輪】TOTO、ユニットバス出荷が累計1000万台突破

 TOTOが半世紀以上にわたって製造販売している「ユニットバスルーム」の出荷台数が、3月に累計1000万台を突破した。1964年9月の発売以来、施工性や機能性の高さ、多様なデザインなどが受け入れられ、国内市場で主流の製品となった。

 初めての製品は、前回の東京オリンピックが開催された64年、国内初の超高層ホテルとして開業した「ホテルニューオータニ」に納入した。限られた工期で多くの客室に入浴設備を納めるため、施工性の高い「ユニットバスルーム工法」を独自開発した。

 66年に集合住宅向け、77年には一戸建て住宅向けの製品を開発。2002年にはマンション更新需要の高まりを見据えたリフォーム対応製品を発売した。累計出荷台数が500万台を超えるのにかかった期間は64~02年の38年間。1000万台突破までの500万台は15年余りと大幅に短くなっており、ユニットバスが一般化した市場環境がうかがえる。

【1年間の累計来館2000万人記録】GINZA SIX(東京都中央区)が開業1周年

 ◇銀座に新たな活気を創出◇

 森ビルらが東京・銀座に開発した複合施設「GINZA SIX」が20日、開業から1周年を迎える。累計来館者は2000万人を記録。最寄りの東京メトロ銀座駅の利用者は1日当たり約7400人増加した。

 周辺店舗の売り上げもアップするなど、エリア全体の集客や回遊性向上も貢献している。魅力的で多様な機能を備える施設が誕生したことで、銀座エリアに新たな活気が生まれている。

 GINZA SIX内には商業施設のほか、文化発信拠点として能公演やイベントを開く「観世能楽堂」や館内の吹き抜けに設置したアート、屋上庭園などがある。昨年4月の開業以来、時間を掛けて銀座エリアで買い物や文化体験を楽しむ「滞在型」の過ごし方が広がりつつある。

 ◇回遊性向上や周辺への集客効果も◇

 施設の整備効果は施設単独だけでなく、周辺の回遊性とにぎわいの創出にも貢献している。開業以前、周辺の店舗には買い物客が取られてしまうとの懸念があったという。開業後の来街者増加で、周辺店舗の中には入店客数が増加し、売り上げアップにつながった例もある。ビル内にエリア最大級のオフィスを設けたことで、オフィスワーカーが周辺の飲食店で昼食をとるケースも増えた。
ビル内に設けられた「観世能楽堂」。
伝統文化の発信拠点として注目されている
こうした開業効果は、地方創生にもつながっている。開発に携わった森ビルは、日本で最も強い発信力・磁力を持つ東京を「ショーケース」として、全国各地の優れたコンテンツ(伝統、文化、生産物、技術)を世界にアピールする取り組みを展開している。飲食店舗や伝統工芸の販売店などの名店を全国から集め、GINZA SIXの店舗を訪れた客が、地方にある本店に足を運ぶケースが増えるなど、集客効果が表れている。

 【GINZA SIX】(中央区銀座6の10の1)組合の施行の再開発事業で整備された複合ビル。建物規模はS・RC・SRC造地下6階地上13階建て延べ14万8700平方メートル。設計は鹿島・谷口建築設計研究所JV、外装意匠統括は谷口建築設計研究所、施工は鹿島が担当した。

【日常を切り取った力作求む!!】「夢けんせつフォトコン」の作品募集開始

 滋賀県建設業協会(本庄浩二会長)は、今年で24回目を迎える「夢けんせつフォトコンテスト」の作品募集を開始した。締め切りは7月20日(当日消印有効)。入賞作品は、年間を通じて公共施設等の関連施設で展示するとともに、県内で行われる各種フェアなどで展示する。

 同コンテストは、建設業界に対する理解促進とイメージアップを図ることなど目的に毎年実施している取り組み。14年度からは若年者の興味・関心を高め、将来の入職者増加につなげようと、22歳以下の作品を対象とする「U22特別賞」を設けている。

 作品テーマは、第1部が「建設業ではたらく人々」。全国の建設現場で安全に配慮しながら、自らの技術・技能を発揮し、いきいきと働く人たちや固い絆・チームワークによって仕事を進める人たちの姿をとらえた作品を求める。第2部では「建設物がある滋賀の風景」として、県内の土木・建築構造物と調和した景観・町並みなどをとらえた作品を募集する。

 規格はデジタルカメラ(スマートフォン可)、スチールカメラとも、カラー四ツ切またはワイド四ツ切。スマートフォンについてはフルHD以上の画像サイズを推奨。作品は3年以内に撮影された単写真(未発表・未応募のものに限る)で、各部門とも1人2点まで受け付ける。

 作品は郵送または持参で受け付ける。9月中旬に各部門でグランプリ1点、優秀賞4点、特別賞1点、U22特別賞1点、入選10点、奨励賞5点を選定し、10月中旬に表彰式を行う。

 問い合わせ先、作品の提出先は、滋賀県建設業協会「夢けんせつフォトコンテスト係」(〒520-0801 大津市におの浜1の1の18、電話077・522・3232、FAX077・522・7743)。

【働き方改革推進、振り替え休工義務付け】大阪府都市整備部、全発注工事に「4週8休」適用

大阪府都市整備部は4月から入札公告する全工事を対象に、建設現場の「4週8休」を適用すると発表した。単価契約工事や災害復旧工事は除く。閉所日は資料整理などの事務作業も認めない。

 やむを得ず休日に作業する場合は振り替え休工日を取得しなければならない。建設業界の若手技術者の離職を防ぐとともに、新卒者が入職しやすい職場環境づくりを支援する取り組みの一つ。同部では16年度から「4週8休モデル工事」を試行してきた。

 同部では4週8休モデル工事を16年度に31件、17年度に37件試行。16年度には25件のモデル工事が完成し、このうち21件が現場作業期間中の90%以上で4週8休を達成した。こうしたモデル工事の成果を踏まえ同部では全工事での4週8休完全実施を決めた。

 完全実施後のルールはモデル工事と変わらない。同部は現場の週休2日の計画を、受注者が作成した施工計画書や計画工程表で確認。振り替え休工日は休日作業届や工事月報(工事履行報告書)の提出時にチェックする。

 振り替え休工日を確保し工期内完成への工夫などを行い現場作業期間中の90%以上で4週8休を実現したケースや、4週8休以上の休工日を確保するための有効な工夫などが認められるケースに対しては、工事成績評定時に加点評価を行う。同部では4週8休の完全実施に伴い間接工事比率の補正など必要経費の計上について、本年度の導入に向け検討を進めている。

 一方、建築関連工事を多く発注する住宅まちづくり部は本年度早期発注工事案件から「土日・祝日休業モニタリング事業」の試行を開始している。土日・祝日は現場を閉所し資料整理などの事務作業も認めないルールなどは都市整備部などとほぼ同じ。本年度の成果を分析するとともに、受注者の意向も聞いて19年度以降の方針を決める予定だ。

【長濱ねるさんと川栄李奈さん起用】建災防、安全週間の普及啓発ポスター販売開始

建設業労働災害防止協会(建災防)は、7月1~7日に実施する「全国安全週間」(準備期間6月1~30日)の普及啓発ポスターを作製し、販売を始めた。モデルにタレントで欅坂46の長濱ねるさん(写真左)、元AKB48の川栄李奈さんを起用した。

  厚生労働省は、「新たな視点でみつめる職場 創意と工夫で安全管理 惜しまぬ努力で築くゼロ災」とした全国安全週間のスローガンを発表済み。川栄さんのポスターはスローガンを記載したタイプ。

 価格は200円(税込み)。東京は建災防本部事業部教材管理課、東京以外は各道府県支部で注文を受け付ける。

2018年4月19日木曜日

【都が再発注検討へ】東京スタジアム電気設備改修(調布市)、入札不調に

東京都財務局は、9日に一般競争入札(WTO対象)を開札し、低入札価格調査を行っていた「東京スタジアム(30)電気設備改修工事」の入札不調を公表した。

 調査対象の2者について調査票の不足・不備や未提出があり、ほかに有効な応札者がいなかったため手続きを取りやめた。決定は17日付。

 予定価格は35億5464万円、調査基準価格は31億9917万6000円だった。再発注を検討する。

 工事場所は調布市西町376の3。19年ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会と2020年東京五輪の競技会場整備の一環で、既存スタジアムの競技用照明・音響、リボンビジョン、監視カメラ、情報表示、受変電、電力貯蔵、テレビ共同受信、構内通信、雷保護など各電気設備工事を行う予定だった。工期は20年3月13日(一部19年5月31日)まで。東京スタジアムの建築改修工事は西武建設・協栄組JVが落札している。

【ゼネコンら22社と連携】東京労働局、五輪工事の労災防止策強化

 厚生労働省東京労働局は、2020年東京五輪関連施設工事がピークを迎えている都内の建設現場を対象に、労働災害防止策を強化する。

 ゼネコンや道路舗装会社と連絡会議を設置し、18日に都内で初会合を開いた。会合では連絡会議を好事例の水平展開、安全面の課題を共有する場として活用・運営する方針を確認した。

 連絡会議は、東京労働局の第13次労働災害防止計画(18~22年度)に基づき設置した。20年に開催する東京五輪の関連施設工事がピークを迎え、都内では五輪開催を契機とする大規模な都市再生事業やインフラ整備も進む。都内の建設現場で労災防止策を推進するには、建設会社との連携強化が不可欠だと判断した。

 同日の初会合であいさつした東京労働局の鈴木伸宏労働基準部長は、五輪関連施設工事を中心に都内では現場の大規模化が進んでいる現況を説明。その上で「現場に他業種からの転職や新規入職、外国人など不慣れな方が増えている。例えば(労災防止の指示が行き届くように)朝礼のやり方も工夫が必要だろう」と指摘した。

初会合では、▽店社による定期的な現場パトロールの実施▽「危険標識・掲示」の共通化▽安全帯の使用徹底に向けた標語▽ストレスチェックの実施-に関する具体策も非公開で話し合った。

 東京労働局は連絡会議を年2回程度開催し、都内建設現場の労災防止策に有効な取り組みの水平展開、課題を共有する情報交換の場として活用する。

 連絡会議に参加している企業は次の通り。

 ▽清水建設▽大林組▽大成建設▽鹿島▽竹中工務店▽戸田建設▽五洋建設▽長谷工コーポレーション▽安藤ハザマ▽前田建設▽フジタ▽西松建設▽三井住友建設▽熊谷組▽東急建設▽鴻池組▽奥村組▽NIPPO▽東亜建設工業▽鉄建建設▽ナカノフドー建設▽松井建設。

【回転窓】未婚・晩婚化に歯止め!?

地域活性化と独身者の出会いの場を創出する「街コン」が全国で盛り上がっているそうだ▼異性と巡り合う機会が限られている人にとって、イベント形式で気軽に参加できるのが人気の理由。恋人探しに限らず、異なる業界の人たちとの交友関係を広げたいと参加する人も多いようだ▼趣味や職種を限定するなど、企画内容は多種多彩。主催者は初対面でも会話が盛り上がるように知恵を絞る。鉄道事業者が企画する「鉄コン」では、男性参加者を鉄道マンに限定し、業界関係者の婚活をサポート。沿線地域の活性化と合わせて一石二鳥を狙うイベントもある▼2010年の国勢調査で30歳の未婚率は男性55・0%、女性41・9%。15年の数値も男女ともに変わらない。人口動態統計で17年の平均初婚年齢は前年と同じ男性31・1歳、女性29・4歳。未婚化、晩婚化の流れが落ち着いてきたとの見方もある▼所得増や正規雇用の拡大に加え、街コンや会員制交流サイトなど出会いの機会の多様化が、結婚への意識を高めるのに一役買っている。少子化、人口減少といわれるようになって久しいが、明るい話題が増えることを期待したい。

【青柳美扇さんが書道パフォーマンス】伊丹空港ターミナル改修、中央エリアが先行開業

 関西エアポートが20年のグランドオープンを目指す大阪国際(伊丹)空港ターミナル改修プロジェクト(大阪府豊中市)のうち、店舗などが入る中央エリアが18日、先行オープンした。

 全面改装された商業施設は多くの買い物客らでにぎわい、オープンを祝って書道家の青柳美扇さんによる書道ライブパフォーマンスも行われた。

 伊丹空港の大規模改修は約50年ぶり。中央エリアでは、これまで南北1階に2カ所あった到着口を中央2階に集約し、モノレール駅やバス・タクシー乗り場へスムーズにアクセスできる動線を確保した。全面改装された商業施設には飲食・物販など計30店舗が新規出店。展望デッキのある屋上エリアも拡大し、遊戯施設や家族で楽しめるイベントエリアなどを設けた。改修工事の基本・実施設計を安井建築設計事務所、施工を大林組が担当した。

 18日午前10時から、先行オープンを記念して中央エリア2階到着口前で書道家の青柳さんが書道ライブパフォーマンスを行った。

 多くの観客が見守る中、「空に大きく羽ばたく」「空港のさらなる発展」をイメージした「翔」の漢字を力強く書き上げ、「私も大阪の出身で、本当にきれいになった大阪国際空港を誇りに思う。皆さんもどんどん空港を利用して下さい」と話した。

【9棟総延べ7.6万㎡、立飛HDが事業推進】東京・立川で「みどり地区プロジェクト」が進行

「(仮称)GREEN SPRING」と名付けた街区の施設配置図
 ◇「地元立川」の発展に貢献、20年春から順次開業◇

 立飛ホールディングス(HD、東京都立川市)がJR立川駅北側で手掛ける複合開発施設「(仮称)立飛みどり地区プロジェクト」が2月、着工した。ホールやホテル、商業施設、オフィスなど9棟で構成する開発の総延べ床面積は7・6万平方メートルに達する。村山正道社長は3月に開かれたプロジェクト説明会で、「地元立川の街づくりには貢献する責任がある」と話し、地域住民が集い、新たなライフスタイルを提供する場を設けたいと強調した。

 20年春から順次開業予定の複合施設を建設するのは、立川駅から徒歩8分に位置する立川市緑町3の1ほか(事業区域面積3・9ヘクタール)。立川基地跡地の一部で、同社は15年2月に国から「都市軸沿道地区」のA-2地区(2・9ヘクタール)とA-3地区(1ヘクタール)を一括で取得した。
 市内に工場を有する飛行機製造会社が前身の同社は、戦前から戦中にかけて陸軍用飛行機を造っていた。不動産開発事業にシフトした現在は、市内で倉庫やオフィス、工場の賃貸事業を手掛ける。所有物件数は約160棟。保有地約98ヘクタールは、市面積の約25分の1に当たる。
多摩地区で最大規模となるホール棟
「(仮称)TACHIKAWA STAGE GARDEN」
「立川の将来を考えた時、このエリアをどう開発するかはとても重要」。そう話す村山社長は、地域に根差した事業を展開する立場から、「どうしても落札したかった」と念願の土地取得に取り組んできた経緯を振り返る。
 立飛HDのグループ会社で、複合施設の開発を担う立飛ストラテジーラボの横山友之執行役員は「立川を拠点にビジネスを展開して約100年たった。今後も地域の人とつながりながら、この開発で立川がどう発展していくのかを伝えたい」と決意を語った。

 プロジェクトには6人のデザイナーが結集。マスターデザイナーを務めるスタジオタクシミズ(東京都中央区)の清水卓氏は「自分たちの領分を超え、フラットな意見交換ができた」、ネーミング開発やPRなどのブランディングを担当するPOOL(東京都渋谷区)の小西利行氏は「ハコモノを造る都市開発ではなく、街を一から造る感覚だった」とそれぞれの立場で臨んだプロジェクトへの思いを語る。

 建設する施設はA-2地区が▽A棟(オフィス)=9階建て▽B棟(オフィス・商業)=地下1階地上7階建て▽C棟(ホテル)=地下1階地上11階建て▽C2棟(商業)=2階建て▽D棟(オフィス・商業)=3階建て▽E棟(オフィス・商業)=3階建て▽F棟(商業)=3階建て▽G棟(商業)=3階建て-の8棟。このうちA棟の敷地(2448平方メートル)は定期借地権(50年間未満)を設定して多摩信用金庫に貸し出し、同信金の新本店・本部棟が建てられる。A-3地区にはホールを整備。建物は計9棟で、総延べ床面積は7万6216平方メートルの規模となる。
全室50㎡以上を確保するホテル棟
「(仮称)SORANO HOTEL」
多摩信金が建築主となるA棟を除く設計者はA-2地区が山下設計・大林組JV、A-3地区が山下設計。施工はいずれも大林組が手掛ける。A棟は清水建設が設計し、施工を清水建設・中島建設・中村建設JVが行う。

 多摩地区最大規模となるホールは約2500席を備え、ステージと屋外の客席がつながる屋内外一体型。ホテルは81室の客室が全て50平方メートル以上の広さを確保し、最上階には同地区内で掘削した天然温泉を使ったスパを設ける。約40の店舗、テナントごとに大型テラスを備えたオフィスビルも配置する。中央の広場は約1万平方メートルの規模。市民やオフィス利用者、来街者の憩いの場となる。

 横山執行役員は、街区開発について「自然環境が豊かな周辺を考慮した」と話す。容積率の上限500%に対して実際の計画容積率が158%と余裕を持たせた。ホールやホテルからは隣接する国営昭和記念公園から富士山までが一望できるようにも配慮した。

 ここ数年で立飛HDは、多摩都市モノレール線立飛駅周辺で三井不動産と共同の大型商業施設「ららぽーと立川立飛」(15年12月開業)、スポーツ施設「アリーナ立川立飛」(17年10月開設)の開発も手掛けた。両施設から整備中のエリアまでは約1・8キロ。歩いて移動できる距離にある今回の複合施設が完成すれば、立川駅のにぎわいを立飛駅まで延ばし、各施設や昭和記念公園も回遊できる街が生まれる。

 「われわれの責任はこの開発で終わるとは思ってはいない」。そう話す村山社長は、保有する多くの土地を含めて今後も開発を着実に進め、不動産開発事業を通した立川の街の発展に貢献していく考えだ。