2018年1月12日金曜日

【回転窓】仕事の基礎は「まねる」こと

日本の老舗とその仕事ぶりを紹介した『老舗の履歴書』(樋口修吉著、中央公論新社刊)の帯に、一昨年に亡くなったタレントの永六輔さんが〈先代の仕事に似せる。「仕似せ」が「老舗」になる〉と推薦文を寄せていたのを読んだことがある▼年季が入った職人の中には「技は盗むもの」との信念から弟子に手取り足取り教えることをしない人も多い。「自ら学ぶ者だけが優れた職人になる」と▼学ぶの古語は「まねぶ」。つまり「まねをする」という意味。何事も最初の一歩は先輩の仕事を見てそれをまねるところから始まる。簡単なようで難しいことだが、それが仕事の基礎を形作ることになる▼最近の大学は専門分化が進み、技術系の新卒社員の中には、基礎的な構造力学や水理学などを深く学んでいない人が増えているそうである。パシフィックコンサルタンツは大学と協定を結んで講座を開設してもらい、社員を通わせているという▼基礎をおろそかにしがちなのは、昨今の日本の風潮といえるかもしれない。若手に基礎を再教育するのは企業にとっても負担だろう。基礎の学び方を再考する必要がありはしないか。

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